北方謙三先生の傑作歴史小説「絶海にあらず」の感想記事です。
この記事を読めば、「絶海にあらず」を手に取ってもらえること間違いなしです!!
「絶海にあらず」は、北方謙三先生の日本の歴史小説の中で1番古い歴史を扱った作品になります。
そのため、北方謙三先生の日本の歴史小説の1作目として読み始めるのにも適した作品です。
他にも、主人公の藤原純友は、いわゆる海賊として描かれているため、海賊好きな人にもオススメ!!
あらすじ

時は平安時代。
この時代に生まれた、藤原北家の貴族の男藤原純友。
この藤原純友が京都の学校で無意味に生きているところから物語は始まります。
そこから、坂東への旅を経て平将門との出会いが描かれます。
その後、伊予(現在の愛媛県)の地に役人として赴任することになった藤原純友が出会ったのは、広大な海と、その海とともに暮らす海の民たちでした…。
その出会いをきっかけに、藤原純友の激動の人生が動き出します!
そこから、歴史的に有名な「承平天慶の乱(じょうへいてんぎょうのらん)」へと繋がっていくことに…。
藤原純友がどういった思いでこの乱を起こしたのか、漢の子必見の内容です!
藤原純友って?

そもそも藤原純友って誰?って思う方も多いと思います。
実際に、私も、「絶海にあらず」を読む前は知りませんでした。
あらすじで少し触れた「承平天慶の乱(じょうへいてんぎょうのらん)」は、歴史の教科書にも載っている大きな戦でした。
その首謀者として有名な人物が、「平将門」です。
「平将門」はみなさん知っていると思います。
とっても強い怨霊だとか、首だけが東に飛んで行ったとかで聞いたことがありますよね。
それと同時期に戦を起こした首謀者が「藤原純友」なんです。
関東地方を席巻した東の「平将門」に対して、最終的には大宰府襲撃までした西の「藤原純友」と覚えてもらえれば大丈夫です!!
この藤原純友は、当時貴族として台頭していた藤原北家の人物でした。
ですが、藤原北家と言っても、藤原純友の生まれは、いわゆる分家のため、そこまでの出世は見込まれません。
出世が見込まれていないと言っても、普通に生活することは問題ありません。
その藤原純友が赴任した伊予で、当時の伊予の海賊たちと手を組んで起こしたのが、先ほどの「承平天慶の乱(じょうへいてんぎょうのらん)」になります。
「承平天慶の乱(じょうへいてんぎょうのらん)」の後、捕まった後に獄中で亡くなったという話や、逃げ延びて行方が分からなくなったなどと、藤原純友が最後にどうなったのかは定かではありません。
その藤原純友が、なぜこのような戦を仕掛けたんでしょうか…。
そして、北方謙三先生は、この藤原純友の最後をどう描いたのでしょうか…。
それは、本書「絶海にあらず」を読んでください!!
感想

藤原純友の生き様にときめく!!
とにかくこの一言に尽きます。
北方謙三先生の小説の主人公は、藤原純友もですが、とにかくカッコいいんですよね。
藤原純友が伊予の地で見た海。
その海は決して誰かに縛られていいものではないという思いから戦を仕掛けるのが藤原純友です。
なぜこのような大規模な戦をすることができたのかというと、藤原純友は、人をしっかりと見てるんでしょうね。
本来であれば、役人として赴任してきた藤原純友と、伊予の海の民たちとでは相いれない存在同士のはずでした。
ですが、藤原純友は少し変わっています。
藤原純友は、もともと京都での出世を望んでいなかったため、伊予という場所をしっかりと知りたいと考えるのです。
そこで藤原純友は、伊予の地に住む海の民たちと対話を試みます。
この辺りの描写がめちゃくちゃカッコいいんですよね。
京都から来た役人としてではなく、ただ1人の漢である藤原純友として対話を試みるんですよね。
こういった男と男の会話描写は北方先生の十八番だと思います!
そして、藤原純友が伊予の地で惹かれたものの1つとして、海がありました。
実際に自分で海に出ることを希望する藤原純友ですが、その訓練をしているうちに海のことが好きになります。
ですが、実際の海は、京都の役人が貿易等の海の道をすべて管理しており、海の民たちは満足に海で仕事をすることができていませんでした。
そのことに不満を持った藤原純友が行動を起こすという、普段私たち読者ができない権力への抵抗をやってくれる藤原純友を見るとスッキリした気持ちになるんですよね。
とにかくカッコいい漢が見たいあなたは必見です!!
まとめ
北方謙三先生の傑作「絶海にあらず」は、権力に不満を持った人間が革命を起こすというわかりやすく胸を打つストーリーになっていますので、そういった作品が好きな方には特にオススメです。
最後にこの2人のあるシーンの会話を紹介して終わりたいと思います。
藤原良平
藤原純友。ここで私の首を奪るがよい。
藤原純友
良平卿は生きられよ。
生きて、海のこわさを、太政大臣に伝えられるがよい。
いまここに攻めこんだのは、人ではない。
海の怒りが、大波となって押し寄せたのだ。
藤原良平
私を、殺さぬと?
藤原純友
良平卿には、おやりにならなければならぬことがある。
海の平穏を、その眼で見続けていかれることだ。
藤原良平
生き恥を晒せと言うか、純友?
藤原純友
生きて恥をさらすのは、太政大臣だけです。
しかも、海の上だけでの恥です。
だから安心されよと、忠平卿にもお伝えください。
藤原良平
鴻臚館も焼いたのか、純友。
藤原純友
焼けておりましょうな。
異国との交易があそこだけというのは、国を閉ざしていることと同じであった。
なにも、意味はない。
藤原良平
礼を言おう。
あれが、私の肩にのしかかっていた。
この2人めちゃくちゃ渋い!!
以 上
コメント