戦国時代で大人気なのは、間違いなく真田家ですよね。
本作「真田三代」は、その真田家が戦国時代にどう生き抜いたのかを、それぞれの時代の当主をメインとして描かれている、歴史小説の傑作です。
NHKの大河ドラマにもなった真田家のことを知りたい方、面白い歴史小説を探している方は必見です!!
真田家の生き方ってとっても魅力的なんですよね。
本作「真田三代」で皆さんにもその魅力が伝わってくれたら嬉しいです!!
あらすじ

戦国時代、山間部の弱小勢力であった真田氏が大名になるまでの物語。
元々敵であった武田に仕えて領地を広げた一代目・真田幸隆。
武田滅亡後、大国に囲まれながらも領地を広げていった二代目・真田昌幸。
日本一の兵と言われた真田幸村・真田を残し繁栄させた真田信之。
この4人が激動の戦国時代を駆けぬいたさまを描いた長編歴史小説の傑作です。
感想
主役交代により、物語の展開に厚みがあって面白い。
本作「真田三代」の何が面白いのかというと、幸隆、昌幸、信之、幸村の主役交代により、それぞれの時代の真田の生き方の違いが表現されていて面白いんです。
真田家は、武田氏に1度滅ぼされます。
その後、初代真田幸隆が、改めて武田信玄に仕えるところからが、本作「真田三代」のスタートです!
初代、鬼と呼ばれた真田幸隆

真田幸隆が主役の際は、0からのスタートです。
幸隆は、持ち前の智謀で武田信玄でも落とすことができなかった砥石城を攻略することで武田での地位を確立していきます。
初代幸隆は、この武田家での立身出世がメインの話になります。
その幸隆と並行して、幸隆の息子たち、長男信綱、次男昌輝、三男昌幸、四男信伊も登場していきます。
初代幸隆の活躍により、真田は、昔失った領地を取り戻すことに成功します。
その後、真田幸隆は引退し、真田の家督を長男である信綱に譲ります。
この信綱を扱う歴史小説をなかなか見たことがなかったため、この辺りは新鮮な気持ちで読むことができました。
以上のように、初代幸隆が真田の領地を取得します!
その後、長篠の戦いを経て、真田の家督は三男昌幸に。
二代目、表裏比(ひょうりひ)興(きょう)の者真田昌幸

二代目真田昌幸の時代は、表裏比興という名前のとおり、いかに真田を存続させるかという外政がメインになります。
初代幸隆の時代は、合戦や調略をバンバンしていって武田での地位を得ることに苦心していましたが、幸隆が手に入れた土地を知略の限りを尽くして存続させたのが昌幸でした。
この昌幸の生き残りにかける覚悟が見ていてかっこいいんですよね。
そして、この辺りになると、昌幸の息子である、信之、幸村も登場するようになります。
この2人の兄弟の考え方の違いの対比も、本作「真田三代」の面白いところだと思います。
昌幸の代になると、徳川を相手取った2回の上田城決戦が手に汗握る展開で面白んですよね。
真田昌幸の覚悟がわかるセリフがこちら
たしかに、お屋形さまには恩を感じている。
だが、ただ武田に忠勤を励むだけでよいのか。
それだけで、おのれが真に生きたと言えるのか。
おれも乱世に生まれた男だ。
もっと大きな野望を持ちたい。
野望とは、どのような。
夢、といってもいい。
夢でございますか。
うむ。
それはまだ、雲のごとくもやもやとして形をなしていない。
しかし、夢はかなわぬのではない。
夢をかなえるための努力が辛いから、みな途中であきらめてしまうのだ。
おれは夢を諦めぬ。
それはおそらく、平坦な道ではあるまい。
そなたや、生まれてくる子に、いらざる苦労を負わせることもあるだろう。
いまさら、何を仰せられます。
いや、いまだからこそ、そなたに言っておかねばならぬと思った。
おれは平穏無事な人生か、野望に満ちた人生か、どちらかを選べと言われたら、迷わず後者を選ぶ男だ。
夢を諦めないっていうのが良いですよね。
この諦めないという気持ちが真田を存続させたんだろうと思うと…良い!
三代目、日本一(ひのもといち)の兵(つわもの)と呼ばれた真田幸村、真田を存続させた真田信之

真田家で1番有名なのは、ゲームや大河ドラマ「真田丸」で主役にもなった真田幸村ですよね。
この幸村の大坂の陣での活躍をメインに描かれるのが、滅びの美学を感じます。
大坂の陣で、豊臣方に勝ち目はほぼありません。
それでもなお、豊臣に味方をする幸村…。
この幸村の思いとは何だったのか。
そして、幸村のこの思いに至ったのが、人質生活での直江兼続との出会いであったことは間違いないと思うんですよね。
幸村が影響を受けたと思われるセリフがこちら
わしは、まことに天下万民の安寧を願うならば、不識庵さま御自身が真っ先駆けて京に旗を立て、この乱世をおさめるべきではないかと申し上げた。
なんとも、怖いもの知らずであったことよのう。
それに対し、不識庵さまはかように申された。
天下を取るだけが道ではない。
大きな力を手に入れたとき、人は弱き者、小さき者の痛みを忘れ、手に入れたものを保つことのみに汲々とするようになる。
自分はそうはなりたくない。
人が人として本来あるべき美しき姿を追いもとめ、背筋をのばして天に恥じぬ生き方をつらぬきたいものだ。
不識庵さま は上杉謙信のことです。
幸村は、愚直にこの生き方をつらぬきとおそうとしたんだろうなって思うと泣けてくる。
また、それがわかる幸村のセリフがこちら
それがしには、領地よりも大事なものがございます。
誇りにございます。
目先の餌に釣られ、世の理不尽にものを言う気概を捨て去っては、一族を興した祖父様や、表裏比興と言われながらも、おのが筋をつらぬいた父上に申しわけがたちませぬ。
幸村は自分の誇りのために戦う。
それでたとえ自分の命を失っても…。
真田幸村がなぜ大坂の陣で豊臣方についたのか…。
真実は今となっては誰にもわかりません。
ですが、物語の題材としては非常に面白いですよね!!
弟幸村に比べて扱いが地味な気がする信之兄さん。
この信之もめちゃくちゃ優秀だと思います。
自分の父親と弟が敵側に回るというつらい状況の中、徳川の中で存在感を発揮し、のちに徳川の世になってからも領地を与えてもらっています。
そう考えると、信之は優秀だったことがよくわかりますよね。
「真田三代」を読んだなら
本作「真田三代」を読んだのであれば、武田信玄が気になってきませんか?
武田側から見た真田幸隆を見たいと思いませんか?
そんなあなたには、新田次郎先生の「武田信玄」をオススメします!
まとめ
「真田三代」は、戦国時代でも屈指の人気である真田一族のことがよくわかる本です。
この作品を読めば真田のことはばっちりです。
ほかにもさまざまな作家さんが真田家のことを描いていますので、本作「真田三代」が面白いと思った方は、他の作品も読んでみると新たな発見があるかもです。
最後に、本作「真田三代」をどういう気持ちで書いたのか、作者火坂雅志先生があとがきで書いた印象に残った一文を紹介します。
この作者さんの熱い思いがあるからこそ、ここまでの傑作を世に送り出すことができたんだと感じました。
世の中は理不尽なことだけである。
その理不尽に対して、たいていは文句も言えず、黙り込んでしまう場合が多い。
人が生きていくにはたしかにがまんや辛抱は大切である。
がまんや辛抱ができない人間は、結局、何事も為すことができない。
だが、ときには、覚悟を決めて、何かに立ち向かわねばならないときもある。
それは、自分の誇りを守るときだと私は思う。
以 上
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