【本感想】働きアリの法則から見る戦国時代「信長の原理」新たな切り口から紡ぎ出す織田信長の一生とは

読書感想

 織田信長といえば大人なら誰でも知っている戦国武将ですが、本作は、そんな織田信長が吉法師と呼ばれていた幼少時代から、本能寺の変の最期までを描いた作品です。

 ただの時代小説ではなく、会社経営のような集団で何かを成し遂げるという観点から見ても面白いので、普段時代小説を読まずに、経営の本などを読んでいる方にもオススメです!

 基本的にはネタバレしないように感想を書いています。

 そのため、まだ「信長の原理」を読んだことがない方にも安心して見てもらえる記事になります。

あらすじ

 吉法師(後の織田信長)は、織田家では浮いた存在。

 織田家の家臣や実の母からすらも疎まれていた信長。

 そんな信長ですが、ある真理に到達して部下を動かすようになります。

 その部下を動かすために見つけた真理が、「働きアリの法則」でした。

 この「働きアリの法則」から読み解く織田信長の人生とは!?

 ここまで斬新な切り口で織田信長を書き上げる作品はなかなかありません!

感想

「働きアリの法則」から読み解く織田信長の部下の使い方

 「働きアリの法則」とは、簡単に話すと、10人の人間がいた場合

  • 優秀な人間が2人
  • 普通が6人
  • 働かないのが2人

 になり、その比率が1:3:1の割合になることをいいます。

 信長は、幼少時代からみんなに疎まれていたため、1人孤独にアリを見つめながら過ごすという悲しい遊びをしていました。

 そんな信長がアリを見つめていると、前述した働きアリの法則に気が付きます。

 まさにけがの功名!!

 ……ちょっと違うか…。

 幼少時代は、そんなアリの行動を不思議がっているだけで終わっていた信長君でした。

 その後、織田家の実権を握り、数々の戦で戦っているうちに、この「働きアリの法則」を思い出します。

 もしかしたら人間も同じなのではないかと……。

 その後、信長は独自の実験により「働きアリの法則」に確信を持ちます。

 その信長が本能寺の変の前に憂いていたことは、自分の家臣団のうち

  • 柴田勝家
  • 丹羽長秀
  • 滝川一益
  • 羽柴秀吉
  • 明智光秀

 この5人の誰が自分を裏切る働かないアリになるのかでした。

 その結果がどうなるのかは、本作「信長の原理」を読むことでわかりますよ。

織田信長という絶対的な社長の前で部下たちはどう思っていたのか

 本作「信長の原理」の面白いところは、織田信長が主人公でありながら、多くのシーンが織田信長の1人称ではないんですよね。

 これは、姉妹作品「光秀の定理」と同じでした。

 興味深いのが、信長の部下たちの視点から見る織田家という形で物語が進行していくことです。

 信長が若いときに、信長の弟信勝ではなく、信長についてきてくれた佐久間信盛。

 佐久間信盛とは違い、1度は信勝側についた柴田勝家。

 自分の実力がないことを自覚している丹羽長秀。

 出世欲が凄い羽柴秀吉。

 光秀の定理よりも1人称あったかもしれない明智光秀。

 信長に好かれていた松永久秀。

 この辺りの人物たちの描写が上手でした。

 特に、筆頭家老として調子に乗ってしまった佐久間信盛の盛衰が興味深かったです。

 他にも、それぞれの人物のキャラがちゃんと立っているので、読んでいて飽きません。

 サクサクと読み進めることができますよ。

 あまり詳しく各キャラを掘り下げるとネタバレになりそうなので止めておきます!

 気になる方は本作「信長の原理」を手に取ってみてください。

姉妹作品「光秀の定理」で描かれなかった本能寺の変に至るまでの光秀の心情

 本作「信長の原理」の姉妹作品として、「光秀の定理」があります。

 詳しくは、この記事を参考にしてください。

 【本感想】ただの時代小説ではない?「光秀の定理」 人生を数学で例えると?

 「光秀の定理」ですが、光秀が本能寺の変を起こした理由があまり描かれていません。

 それが、本作「信長の原理」で明かされます。

 詳しく話すとネタバレになってしまうので話せませんが、優秀な部下が仕事を任され過ぎるとこうなるのかと思いました。

 本能寺の変を起こすまでの光秀の心情を考えると、ツラいです。

 そして、本能寺の変を起こすことになったのが、まさかの光秀のうっかりというのがまた…。

 光秀疲れてたのね……。

「信長の原理」を読み終えたら

 「信長の原理」を読み終えた方にオススメの作品はこちら!!

 織田信長の傑作小説である「国盗り物語」です!!

 司馬遼太郎先生の傑作ですのでオススメですよー。

 

まとめ

 「働きアリの法則」から部下の裏切りを予想するなど、今まで読んだことのない時代小説が本作「信長の原理」です。

 そんな「信長の原理」の中で最も印象に残った信長の妻帰蝶の言葉です。

 硝石と発火の原理は、たとえて言えば、『水をかければ火は消える』の原理です。

 分かりやすい、ですが、この場合の原理は、『なぜ人は生まれ、すべてが老いて死んでいくのか』という問いに近いように思われます。

 なぜそうなるのかの答えは未だありませぬ。

 が、少なくとも人間に限らず、万物の生き死にを総称した言葉はございません。

 人は、それを『無常』やら『流転』と申しまする。

 根本は分からねど、事象のみを表す言葉で人は納得すると申しますが、納得せざるを得ない。

 なぜ人は生まれて、なぜ人は死ぬのか。

 その内訳までは並大抵な人知では、到底たどり着けぬからでござりましょう。

 であればこそ、神仏というものが出てまいります。

 神仏の思し召しであるという、この虚構の中で、人は安んじて生きてまいります。

 ~中略~

 人の生き死にと同じように、世の多く人が1:3:1の事象に気づき、疑問に思うまで、数百年か、あるいは数千年かかるか……。

 その頃には、当てはまる言葉ができているかもしれませぬな。

 はい!

 帰蝶が話した時代よりも数百年たった現代ですが、当てはまる言葉が「働きアリの法則」ということなのでしょうか。

 この心理を戦国時代に考え付いた織田信長はやはり傑物だったんでしょうね。  

                                   以 上

コメント

タイトルとURLをコピーしました