【本感想】ただの時代小説ではない?「光秀の定理」 人生を数学で例えると?

読書感想

 

 今回感想記事で紹介する作品は、垣根涼介さんの「光秀の定理」です。

 明智十兵衛光秀の生涯や本能寺の変に至る動機などを、愚息と新九郎というオリジナルキャラクターを通じて描いた傑作です!!

 紹介の前に、定理の意味をみなさんはご存じですか?

 定理とは「ある理論体系において、その公理や定義をもとにして証明された命題で、それ以降の推論の前提となるもの。」「公理・定義だけから論理的に導き出せる(一般的)命題」のような意味らしいです。

 これだけ読んでもわかるように、「光秀の定理」はただの時代小説じゃないことがよくわかります。

あらすじ

 厳然たる「定理」が歴史と人生を解き明かす、全く新しい歴史小説が誕生!

 【話題沸騰 『信長の原理』 の姉妹編!】

 明智光秀はなぜ瞬く間に出世し、信長と相前後して滅びたのか――。

 厳然たる「定理」が解き明かす、乱世と人間の本質。
 各界絶賛の全く新しい歴史小説、ここに誕生!

 永禄3(1560)年の京。
 牢人中の明智光秀は、若き兵法者の新九郎、辻博打を行う破戒僧・愚息と運命の出会いを果たす。
 光秀は幕臣となった後も二人と交流を続ける。やがて織田信長に仕えた光秀は、初陣で長光寺城攻めを命じられた。
 敵の戦略に焦る中、愚息が得意とした「四つの椀」の博打を思い出すが――。
 何故、人は必死に生きながらも、滅びゆく者と生き延びる者に分かれるのか。

公式サイト「KADOKAWA CORPORATION 2021」より引用

明智光秀はどんな人?

 詳しくは、以前に記事にした「覇王の番人」において書いているのでそれを参考にしてください。

 【本感想】明智光秀は日本史上最大の裏切り者?それとも…「覇王の番人」に答えが!?

 本作「光秀の定理」の明智十兵衛光秀は素直で明るい青年の印象です。

 地位もなく身分も低い愚息と新九郎の2人に対して真の友達付き合いをしている明智光秀は読んでいて心地いいです。

 将軍足利義昭を救出する際の行動など、自分の利を最優先して動く戦国武将たちとは違い、真の友情を大事にしている明智光秀の好感を持つ読者は大勢いると思います!!

感想

オリジナルキャラクターの愚息と新九郎が良いスパイス!!

 本作「光秀の定理」は、題名だけ見ると明智光秀が主人公だと思う方がほとんどだと思います。

 ですが、物語の進行役は愚息と新九郎の2人です!!

 人生観が素晴らしい愚息と、その愚息と付き合ううちに素晴らしい兵法者に成長していく新九郎。

 この2人から見た戦国時代。

 この2人から見た明智十兵衛光秀というのがこの物語なんです。

 ネタバレにならない程度にこの2人を解説します。

 愚息は博打で銭を得る破戒僧。

 この愚息の博打の理論がこの作品の根本的なテーマになっています。

 それとは別に、愚息は普通の僧とは違い、いわゆる人生の本質にたどり着いているキャラとして、新九郎や明智光秀を導いていくキャラなんです。

 その愚息との出会いにより人生が変わった男が新九郎です。

 元々、新九郎は自分の剣の腕1つで戦国時代を成り上がろうとしていました。

 ですが、路銀も尽き、自分の食事もままならない状態に…。

 もはや辻斬りでもして銭を得るしかないという段階で出会ったのが愚息でした。

 その愚息との出会いから、のちに「笹の葉流」という流派を作る兵法者へと成長していきます。

 この新九郎の良いところは、素直なところなんですよね。

 愚息に馬鹿にされても、ただ怒るのではなく、自分の足りないことを反省し次に活かすことができるんです。

 この2人が明智十兵衛光秀と運命的な出会いをすることで物語が動き出します。 

 作中で、愚息と新九郎は明智十兵衛光秀のために命をかけることになるのですが、その際に見返りに求めたものが、将来明智十兵衛光秀が出世した際に、1万石につき黄金1枚というのが良いですよね!! 

 友のために命をかけるのに対価を求めないのが本当に渋い!!

 このように、「光秀の定理」は、歴史上に名を残していないオリジナルキャラクターの活躍によって素晴らしい作品に仕上がっています。

 詳しくは「光秀の定理」を手に取ってみてください!

これはただの時代小説ではない!?

 確かに、明智十兵衛光秀の生涯を描いた作品ですが、この作品で愚息の博打の四つの椀は、「モンティホール問題」なんですよね。

 この「モンティホール問題」は、簡単に説明すると

 3個の扉のうち、1つに正解がある。

 挑戦者は3個の扉の中から1つを選ぶ。

 その扉と正解の扉以外の1個の扉が開けられる。

 残った自分が選んだ扉か開かれていない扉を再度挑戦者が選びなおすことができす。

 さて、自分が最初に選んだ扉と最後に残っていた扉、どちらの方が正解の扉になる確率が高いでしょうか。

 という内容です。

 数学的ですねー。

 私みたいな文系は最初から考えを放棄していました。

 この答えが、作中の最後の愚息のある言葉に集約されます。

 これが光秀(人生)の定理なのかもしれません。

 私は、読んでいてそう思いました。

 この作品を読んだ方が他にどのような解釈を持ったのか気になります。

 「モンティホール問題」から人生を語る破戒僧愚息。

 このラストは必見です!!

 ちなみに、愚息が最初に出した、「1から10を足した合計の数字は?」を5秒以内に答えろはできました!

 これは私冴えていた。

「光秀の定理」が面白かったなら次はこの作品!

 明智光秀つながりで、最初にもちろっと説明した「覇王の番人」!

 これはオススメです!!

 あとは「国盗り物語」もオススメですね。

まとめ

 ただの時代小説で終わらないのが本作「光秀の定理」。

 普段あまり数学に触れてこない文系のあなた!

 逆に、普段あまり小説を読まない理系のあなた!!

 どちらにも面白さが伝わるのが「光秀の定理」!!

 オススメですよー。

 最後に、この作品で印象に残ったセリフを紹介して終わります!

 十兵衛が自らの郎党を慈しんだ気持ちは、その志向を広げていけば、この国の行く末を危惧する気持ちと変わらぬ。

 だからこそ、見方によっては単なる主殺しにしか見えぬ出来事が、この国の歴史を大きく変えた。

 これが、愚息の本能寺の変に対する感想です。

 他にも、「モンティホール問題」から人生について語る愚息の言葉も印象に残りましたが、それはみなさんが「光秀の定理」を読んで確認してみてください!

                                                      以 上

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