今回の感想記事は、浅田次郎さんの「壬生義士伝」です。
新選組の中でもマイナーな吉村貫一郎を主人公とした歴史・時代劇小説です。
「壬生義士伝」は
こんな方にオススメ!
幕末が好きな方
新選組が好きな方
武士道・義って言葉にトキメク方
泣きたい方
に特にオススメしたい!
今回も、まだ読んだことのない方にむけてネタバレなしの記事になります。
そのため、まだ「壬生義士伝」を読んだことない方でも安心して記事を読めますよー。
あらすじ

幕末の時代に活躍した新選組に不思議な武士が1人いた。
その武士は、南部藩を脱藩した下級武士。
その武士の名は、吉村貫一郎。
剣の腕は新選組でもトップ。
下級武士ではあるが、勉強家で南部藩では、先生をするほどの知識もを持つ。
そんな武士が脱藩してなぜ新選組に入隊しているのか?
新選組の中では守銭奴とバカにされ…。
日本最後の武士の生き様をとくと見よ!
感想

涙が止まらん。洪水警報発令
「壬生義士伝」の好きなところはどこですか?と聞かれたら、私はこう答えます。
それは、とっても泣けるところ。
作者の浅田次郎さんの文章が絶妙なんですよね。
読んでいると涙が止まらなくなる。
特に、主人公貫一郎とその息子嘉一郎のモノローグシーンが私の涙腺を刺激する。
これは、読んだことある人になら絶対に伝わりますよね。
独特な南部訛りがなんとも心地よい。
何を言っているのか、発音されると分からないかもしれないが、文字だと伝わる。
また、「壬生義士伝」は、主人公貫一郎と接点のある人間が、当時の貫一郎の様子を回想するという物語形式になっています。
その回想する人間の貫一郎に対する印象を聞くと、本当に泣けてくる。
貫一郎の一途な努力家だけど不器用。
不器用だけど、人にやさしい。
家族のために自らを犠牲にする精神。
などなど、武士である前に1人の父親として立派だったことがよくわかります。
新選組には本物の武士がいた!
新選組と言えば、色々な物語になっているので知らない人はいませんよね。
その中でも、新選組に関する作品で私が1番好きなのが、本作「壬生義士伝」なんです。
正直、「壬生義士伝」の「吉村貫一郎」の名前は、他の新選組の作品では聞きません。
それほどマイナーな人間「吉村貫一郎」ですが、新選組の中で1番武士らしいと思います。
新選組がなぜ人気があるのかというと、色々な個性を持った人間たちの集まりで、その人たちのキャラがそれぞれ立ってるからだと思うんですよね。
新選組は、もともと、下級武士、百姓の出など、いわゆる武士の集団ではないんです。
そのため、新選組の中には色々な考え方があったんだと思います。
そのため、武士らしくないんです。
武士らしくないため、新選組の中で厳しいルールを作って、無理やり武士の様にふるまっていたんじゃないかなぁというのが、私の中での新選組の印象なんですよね。
その新選組の中で、吉村貫一郎は武士の誇りを持っていたような気がします。
この「壬生義士伝」は、武士とは何か?というのも、吉村貫一郎をとおして描いているため、まだ読んだことのない方は、読むことをオススメしますよー。
義とは何か?男は何のために戦うのか
「壬生義士伝」のテーマの1つとして、武士の生きづらさがピックアップされています。
武士は、自分の仕えるお殿様からお米(給料)をもらって生活します。
今でいう公務員ですね。
ですが、お米は、特に江戸時代では安定的に手に入れることはできません。
また、住んでいる地域によってはお米を育てるのに適していない土地だってあります。
そういった理由もあり、主人公吉村貫一郎が仕える南部藩は貧乏でした。
特に、吉村貫一郎は下級武士であり、まともに生活することはできません。
そんな環境で育った吉村貫一郎ですが、彼は自分の境遇を変えるために必死に努力を重ねます。
剣術では北辰一刀流免許皆伝。
これは、坂本龍馬と一緒の流派ですね。
剣の腕だけではなく、若い頃から藩校に特別に通わせてもらって勉強しました。
通うといっても、教室の中には入れてもらえず、教室の外で、教科書もなく勉強していました。
そんな努力をしても、吉村貫一郎は出世することはできません。
それは、下級武士の生まれだからです。
そのため、家族を養うことができないと感じた吉村貫一郎は脱藩を決意しました。
吉村貫一郎は主君を捨て脱藩しましたが、彼の中では義を失うことはありません。
それが、「壬生義士伝」の中で色々な人の回想から分かるのですが、主人公吉村貫一郎の義とは何だったのでしょうか。
吉村貫一郎の義については、実際に「壬生義士伝」を読んで感じてもらいたい。
ネタバレしない程度に話すと、吉村貫一郎は、とっても素晴らしいお父さんだったのがよくわかります。
彼の誠実さや一途さ、また不器用さ、全てが読者の胸を打つことになるのは間違いありません。
「壬生義士伝」を読み終えたら
「壬生義士伝」を読み終わった方にオススメの作品が、同じ作者の新選組の作品である「輪違屋糸里」がオススメ。
「輪違屋糸里」は、新選組と関係した女性目線から見た新選組を描いた物語です。
浅田次郎さんの斬新な切口の新選組ワールドを堪能しましょう!!
詳しい感想はこちらの記事を参考にしてください。
【本感想】幕末に生きた女性の強さが詰まった名作!「輪違屋糸里」新選組結成の瞬間を見逃すな!!
まとめ
日本のラストサムライ吉村貫一郎の生涯を楽しみたい方必見の作品が「壬生義士伝」!
これほど泣ける小説は中々ありません。
歴史・時代劇小説が好きで、感動したい方は絶対に読んで!!
最後に私が好きなセリフを紹介して終わります。
正直、好きなセリフが多すぎて困る作品でもある。
どのみち死ぬのは、誰しも同じだ。
ここでよいと思ったら最後、人間はつまずいても死ぬ。
戦でなくとも、飢えて死んだり、病で死んだりするものだ。
生きると決めれば、存外生き延びることができる。
このさき生きたところで何ができるのですか?
~省略~
何ができると言うほど、おまえは何もしていないじゃないか。
生まれてきたからには、何かしらなすべきことがあるはずだ。
何もしていないおまえは、ここで死んではならない。
それともおまえは、犬畜生か
いえ、人間です。
そう答えたとたんに涙が出ました。
~省略~
先生。
あたしはかかあを貰いました。
ぶすだけれど、こんな顔のあたしに抱かれてくれるかかあです。
先生。
倅が生まれました。
孫が生まれました。
新しいお店が出せました。
先生。
銭を儲けて、しこたま税金を納めて、柄になく寄付なんぞもして、東京の市長さんから立派な感状をいただきました。
あたしは、人間です。
初めてこの辺りを読んだときは涙が止まらなかった…。
これぞ浅田次郎さんの文章!
電車の中で本を読みながら泣いている変な奴がいたら、それは「壬生義士伝」を読んでいた私だったかもしれません。
しかも、電車の中で号泣したのはこのシーンとは別ですから!!
以 上
コメント