今回の感想記事は、浅田次郎さんの「黒書院の六兵衛」!
江戸城明け渡しが迫った江戸時代末期、つまり、武士の時代の終わり。
この武士の時代の終焉に、一人の本物の武士が取った行動とは?
「黒書院の六兵衛」は
こんな方にオススメ
江戸時代が好きな方
武士の生き方が好きな方
鬱々とした気分から抜け出したい方
に特にオススメです。
今回の感想記事も、ネタバレなし感想になります。
そのため、まだ「黒書院の六兵衛」を読んだことのない方でも、安心してこの記事を読んでもらえます!
あらすじ

徳川幕府が破れ、江戸城開城の時が迫ったとき、尾張徳川家の加倉井隼人は、官軍の先鋒として江戸城に入城することに。
勝海舟から言われた江戸城明け渡しの唯一の懸念点。
それは、江戸城の部屋の一室に座って動かない一人の武士だった。
この武士「的矢六兵衛」の目的は一体?
加倉井隼人は、江戸城無血開城を成し遂げることができるのだろうか。
武士とは何かを問いかける浅田次郎さんの傑作。
感想

六兵衛は何者?ミステリー要素多数
「黒書院の六兵衛」のワクワクするポイントは、何よりも六兵衛とは何者だ?ってことなんですよね。
無言で部屋から動かない六兵衛には色々と秘密がありまして、その秘密がだんだんと明かされていく話の展開は、ミステリー風で飽きさせません。
実は六兵衛は六兵衛じゃなかった!?
六兵衛がかたくなに動かない理由は!?
などなど、六兵衛の周辺では話が尽きません。
また、六兵衛を動かそうとたくさんの人が行動しますが、その結果がまた面白いんですよね。
なぜ六兵衛がそんなことをするのかは、ぜひとも「黒書院の六兵衛」を読んでください!
江戸時代に失われた本物の武士がここに
「黒書院の六兵衛」は、六兵衛の無言の訴えを使って、武士とは何かを読者に問いかけている作品だと思っています。
鎌倉時代から江戸時代の終わりまで日本を作り上げてきたのが武士でした。
いわゆる武家政権です!
その武家政権で培われてきた武士とは何か?
江戸時代末期、もはや名前だけの武士であったこの時代。
ただ座り込むだけ、何もしゃべらない六兵衛が見せる武士の姿は必見です。
本音と建て前に対しての皮肉が効いてる!
先ほどから話をしているように、江戸時代末期の武士は、名前だけの武士が多くなっていました。
その中で、様々な謎を持つ謎の男六兵衛が行った行動は、江戸時代末期の武士たちに対する皮肉を含んだ行動もあったんじゃないのかなと思っています。
「黒書院の六兵衛」の最後の方で、六兵衛がどうしてこんな行動を取ったのかは判明します。
その行動の結果は、皆さん自身が「黒書院の六兵衛」を読んで味わってもらいたいので、私からは話しません。
ですが、その結果以外にも、六兵衛の行動には当時の武士に対する皮肉が詰まっていると思いました。
何をするにしても、昔からの慣習に従って動かないといけないと考える武士。
自分が失敗した時の責任を逃れたいために誰かに押し付けようとする武士。
この武士たちの行動を読者自身は想像してみてください。
読者にも考えることがあるんじゃないでしょうか?
こういうルールだからと言って、いつまでも不合理なことを続けることってありますよね?
みなさんもそういったことを心の内で思ったことありませんか?
昔と今では時代が違うのは当たりまえ。
なのに、いつまでも昔と同じ行動を取ろうとする。
しかも、その行動を取っている人たち自身も、それがおかしいことに気づている。
でも、多くの人は、昔からのルールだからと言ってそれを改善しようとはしませんよね。
私たちは六兵衛みたいに行動に移すことはなかなかできません。
それは、江戸時代末期の多くの武士もそうでした。
そうじゃない一握りの武士たちによって、日本は明治を迎えることになります。
また、自分が失敗することを恐れて他人任せにする人っていませんか?
武士だけではなく、今の社会でも当たり前のように存在しますよね。
面倒くさいからやりたくない。
失敗したら怒られるからやりたくない。
この仕事はツラいからやりたくない。
当時の武士もそうだったんでしょう。
特に、武士の時代は、今の時代よりもはるかに上司の命令は絶対だったんでしょうし。
それが嫌だから仕事をしない。
責任を持ちたくないって人多いですよね。
私は、江戸時代の武士の姿を通して、六兵衛が私たちに訴えかけてきていると感じました。
みなさんが「黒書院の六兵衛」を読み終えた時にどう感じるのか、気になります。
「黒書院の六兵衛」を読んだら

「黒書院の六兵衛」を読み終えた方にオススメの作品が、同じ作者の同年代の話。
その作品は「大名倒産」!
「黒書院の六兵衛」でも問題になっていた武士の借金生活。
この「大名倒産」もそんな武士の借金について焦点をあてた作品となっております。
まとめ
江戸時代末期の武士を通して私たち読者に問いかけてくる浅田次郎さんの傑作小説「黒書院の六兵衛」。
これぞ浅田マジックともいえる「黒書院の六兵衛」はいろいろな年代の方に読んでもらいたい一作です。
なぜ六兵衛が江戸城明け渡しの邪魔をするのか?
その真相にたどり着いたとき、私たち読者の心に間違いなくぶっ刺さる感情がクセになる。
以 上
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