今回の感想記事は、北方謙三先生の幕末時代小説の傑作「杖下に死す」と「独り群せず」です。
この2作は、絶対にセットで読んでほしいため、二作品をまとめて紹介します!
なお、読む順番は
- 杖下に死す
- 独り群せず
の順番になります。
「杖下に死す」と「独り群せず」は
こんな方は必見!
ハードボイルドが好きな方!
カッコいい漢たちを見たい方!
生きるとは!?というテーマが気になる方!
に特にオススメ!
なお、今回の感想記事についても、まだ未読の方のためにネタバレなしになります!
あらすじ

「杖下に死す」
米不足が深刻化する幕末の大阪。
そんな大阪にやってきた主人公「光武利之」。
利之は、江戸の御庭番の家系であり、剣の腕は超一流。
そんな利之が大塩平八郎の息子である「大塩格之助」と出会い、友情を育んでいく。
歴史で有名な大塩平八郎の乱の裏で何があったのか?
主人公の利之が取った行動とは?
まさに愛と友情の傑作時代小説!!
「独り群せず」
「杖下に死す」の最後、愛のために剣を捨てた利之がたどり着いた老後。
幕末の動乱の影響で大阪まで不穏な空気に。
そんな時代の情勢とは別に、利之の余生として、家族と友との絆を描く時代小説。
前作「杖下に死す」のように、血沸き肉躍る戦闘は少ないですが、剣でも料理でも、一流とはこういうものなんだと伝わる作者の文章の良さに酔いしれる。
人生とは、生きるとは!?
感想

生きるとは?という問いに対する熱量が凄い!
「杖下に死す」では、大塩平八郎の乱をとおして、利之と大塩格之助の友情を描いています。
ですが、正直、大塩平八郎の乱について詳しい解説などはありません!
そのため、大塩平八郎の乱に対する歴史小説を期待している方は、「杖下に死す」はガッカリするかもしれません。
では、「杖下に死す」と「独り群せず」は何が面白いのか?
それは、主人公「光武利之」の人生を通して生きるとは?という一人の男の人生を描き切っているのです!
「杖下に死す」での初登場の時の利之は、自分の命を雑に扱っています。
それでも死なないのは、剣の腕が超一流だから。
その剣の腕を買われて、大塩格之助の剣の師匠になるのですが、この格之助との剣の修行シーンがもう凄い!
剣の修行が、剣の腕ではなく、心を鍛えているっていうのが分かる!
心を鍛えて、自分の人生とは何かを確信した大塩格之助。
その格之助の覚悟を見た利之が取った行動は?
そして、利之は、愛する女性とも出会います。
この女性との愛を通じて、利之が最後にどういった行動を取るのか、必見です!!
そして、「杖下に死す」のラストから20年経った「独り群せず」。
剣を捨て、料理人として生きた利之は孫までできます。
その孫との日常生活の描写が大好きなんですよね。
また、「杖下に死す」ではちょっと嫌な奴だった「内山彦次郎」との友情も好き!
そして、この内山彦次郎との友情のために、利之が取った行動のラスト数ページが大好きすぎる!!
幕末の日常を綴っているだけなのに、ここまで引き込まれるとは!!
これは、主に、「独り群せず」の話です。
「杖下に死す」では、かなりシリアスな場面が多く、そういう意味ではワクワクドキドキさせられて読み進めることができました。
ですが、「独り群せず」では一転、老人となった利之が、隠居先で自分の好きな料理を作る小さな料理屋を開いてのん気に暮らす描写が8割以上です。
それでも、この描写がとてつもなく面白い!!
息子や孫を通じて料理の極意を教えている利之の姿は、前作「杖下に死す」の死にたがりとはまさに別人。
特に好きなのは、利之と孫の描写。
孫を褒められて嬉しそうな利之の姿が本当に感動する。
なぜ、この日常生活の描写がほとんどなのに「独り群せず」が最高なのかというと、個人的には、この日常があったからこそ光ったラスト数十ページの展開が完璧だからでしょう。
「杖下に死す」と「独り群せず」は、このラスト数十ページのために読んでも後悔しないと自信を持ってオススメできる!!
とにかくカッコいい主人公光武利之!
「杖下に死す」と「独り群せず」がなぜここまで面白いのか?
それは、間違いなく主人公光武利之のカッコよさ!!
なぜ利之はここまでカッコいいのか?
それは、大阪での出会いが良かったんでしょうね。
大塩格之助との友情を育むシーンで利之の人間性がよく表現されていました。
適当な利之と、生真面目な格之助。
すぐ動く利之と、まず思考することから始める格之助。
一見すると、相反する二人ですが、不思議と馬が合う。
この格之助と2人で何かをやっている利之のシーンは、全て尊い。
また、最愛の女性お勢との出会いもまた格別。
このお勢と出会ったことで、利之は、人間でいられたのがよくわかる。
そして、老人まで生きることができたのは、このお勢のおかげ。
剣を捨て一流の料理人となることができたのも、お勢との出会いのおかげだったんでしょうね。
「杖下に死す」と「独り群せず」は、代々御庭番として裏家業をしていた家に生まれた利之が人間の生活を得て、その生活を守ろうとする物語なんです。
この利之が人としての生活をするようになるまでの過程を「杖下に死す」で描き、「独り群せず」では、人の生活を手に入れた利之が描かれます。
そして、人としての生活を手に入れた利之が、最後に取った漢としての行動が最高なんですが、それは、皆さんに読んでもらいたい。
「杖下に死す」「独り群せず」を読み終えたら?
「杖下に死す」と「独り群せず」が面白いと感じた方は、同じような幕末の作品を読みたくなりますよね。
そんな方にオススメなのが、同じ北方謙三先生の作品である「余燼」がオススメ!
天明の打ちこわしを描いた北方謙三先生の初幕末時代小説。
この「余燼」は、漢に出会って漢であろうとした男と、漢たちの友情ストーリーにとにかく胸を打ちます。
また、戦闘シーンの描写も圧巻!
まとめ
今回の感想記事は、1人の男の人生を見事に描いた「杖下に死す」と「独り群せず」でした。
北方謙三先生のハードボイルドが好きな人は必見です!
また、「杖下に死す」と「独り群せず」は、それぞれラストの辺りの描写が素晴らしい!
終わりよければすべてよしという言葉を体現した作品だと思う。
最後に、私が大好きなワンシーンを紹介して終わりたいと思います!
このワンシーンは、今まで読んできた小説の中でもトップクラスに大好きなんですよ。
ほんとうに、食べさせてみたい男が、ひとりだけいた。
もう、食べものを口にすることもなくなった男だ。
どんな捌き方をしても、あの男だけはうまいと言ってくれそうだった。
この文章がどれだけ私の心に刺さったのかは、皆さん今すぐ「杖下に死す」と「独り群せず」を読んでくださーい!
以 上
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