今回の感想記事は、浅田次郎さんの「輪違屋糸里」です。
浅田次郎さんの新選組3部作の2作目にして、新選組を女性視点で描いた今までにない新選組小説。
浅田次郎さんの新選組小説1作目の「壬生義士伝」は、男の幕末、武士とは?義とは?というテーマでした。
今回の「輪違屋糸里」のテーマは、女性の幕末、女性から見る男とは?女性の生き方とは?を見事に描いています。
また、新選組の悪役のイメージが強い「芹沢鴨」の印象を変えた作品とも言えるでしょう。
「輪違屋糸里」は
こんな人にオススメ!
「壬生義士伝」が好きな人
幕末が好きな人
強い女性主人公が好きな人
新選組が好きな人
に特にオススメです。
いつものように、ネタバレなしの感想のため、まだ「輪違屋糸里」を読んだことがない方でも、安心してこの記事を読めますよー。
あらすじ

幕末の時代。
新選組の結成によって人生が変わった女性たちがいた。
新選組「土方歳三」と恋仲になる・輪違屋の天神「糸里」。
新選組「平山五郎」と恋仲になる・桔梗屋の芸妓「吉栄」。
新選組「芹沢鴨」の愛人・「お梅」。
新選組の屯所の女房・「おまさ」と「お勝」。
この5人の女性から見た芹沢鴨暗殺の真実を描いた浅田次郎の新選組小説2作目!
感想

女性視点から見た幕末の世界
今作「輪違屋糸里」は女性視点から見た新選組なんです。
幕末に生きる女性たち。
現代に比べると、女性の人権は男性よりも低かったことは間違いありません。
「輪違屋糸里」の主人公糸里だってそうです。
それでもなお、女性である前に1人の人間として覚悟を決めて生きる糸里はカッコよかった。
女性に対して「カッコよかった」という言葉が褒め言葉なのかどうかは分かりませんが…。
特に、「輪違屋糸里」の時代背景は、新選組結成初期の芹沢鴨が暴れまわっていた時代です。
まだまだ皆さんが一般的にイメージする新選組にはなっていない状態。
そんな時代でも、己の生き様を見せつけた糸里やほかの女性たちには感動しかありません。
特に、作品終盤の新選組と大きく関わることになった女性3人。
糸里
吉栄
お梅
この3人がどういった選択を取るのか…。
この3人の選択は必見です!
ここで3人の結末を話すとネタバレになるため、結果は皆さん自身で読んでください!
芹沢鴨はどんな人物だったのか?
新選組の問題児と言えば、新選組を知っている人なら「芹沢鴨」を上げる人は多いと思います。
ですが、この作品の芹沢鴨はめちゃくちゃ魅力的な人物で描かれています。
確かに、酒に酔うと暴れん坊になりますが、素面のときは、まさに武士。
不器用なところもあり、近藤勇ら試衛館メンバーに気を使う描写もあったりと、かなり損する性格だったよう。
こういった芹沢鴨の細かい描写を出すことによって、後述する新選組は劣等感の塊だったというのがよく伝わるキャラとなっていました。
芹沢鴨暗殺の日の一連の描写の感想は、まさに筆舌に尽くしがたい。
芹沢鴨暗殺の日の描写については、皆さん自身で読んで体感してもらいたい!!
浮き彫りになる新選組の劣等感
新選組のいびつさについては、前作「壬生義士伝」でも描かれていました。
「壬生義士伝」について詳しく知りたい方は、私のこの記事を参考にしてください。
【本感想】日本のラストサムライ!号泣必至の「壬生義士伝」1番好きな新選組小説はこれ!!
今回は、そのいびつな新選組になる経緯について描かれていました。
武士ではなく、下級武士や百姓や農民の集まりだった試衛館のメンバー。
それに対して、芹沢鴨は、作中でも武士と表現されるほどの人物であり、かなり位の高い人物として描かれています。
そんな芹沢鴨を暗殺することになる近藤たち新選組の思いとはどうだったのか?
そして、その思いから出来上がった組織が「新選組」であることから、「壬生義士伝」での後期新選組のイメージが出来上がったんでしょう。
「輪違屋糸里」で印象的だったキャラクターとして、私は、土方歳三・永倉新八・斎藤一・平山五郎でした。
特に、平山五郎に関してはいい男だった。
叶わない思いだと知りながらも、好きな女性のために生きる男の不器用さが好き。
平山五郎と吉栄の恋の行方ついては必見です!
この2人の恋の行方を知りたい方は、「輪違屋糸里」を読んでください。
「輪違屋糸里」の次に読む作品は?
「輪違屋糸里」を読み終わったら次に読む作品は決まっています。
それは、「一刀斎夢録」!
浅田次郎の新選組3部作の最終巻です。
「壬生義士伝」、「輪違屋糸里」の2つの作品でも重要なキャラとして描かれていた斎藤一。
斎藤一から見る新選組が描かれています。
新選組初期は「輪違屋糸里」。
新選組後期は「壬生義士伝」。
最後の締めは、新選組の生き残りであり、数々の戦場で生き残った強者・斎藤一が語る新選組。
「一刀斎夢録」を読んで、浅田次郎の新選組ワールドを最後まで堪能しましょう!
私が言うまでもなく、「壬生義士伝」→「輪違屋糸里」と読み進めた読者であれば、間違いなく「一刀斎夢録」も手に取りますよね。
「一刀斎夢録」が気になった方は、私のこの記事を参考にしてください。
【本感想】新選組を生き抜いた斎藤一が得た剣の奥義とは?「一刀斎夢録」浅田次郎版新選組三部作ついに完結!!
まとめ
今回の感想記事は、新選組を女性視点から見た新しい新選組作品の「輪違屋糸里」でした。
新選組、芹沢鴨、幕末の時代の女性の生き方・強さを1つの作品で描き切った名作です。
最後に、私が「輪違屋糸里」で1番好きなシーンを紹介したい!
よう聞いとくれやっしゃ。
わては、わてにしかできひん生き方をしまっさけ、土方はんもそうしとくりゃす。
あんたはんは、立派なお侍や。
なぁ、おいと。
へぇ、何どすやろ。
おまえ、男を羨んだことはないのか。
ただのいっぺんもあらしまへん。
わては何べん生まれ変わろうと、おなごがよろしおす。
どうやら俺ァ、その立派なお侍とやらになるほかはなさそうだ。
このシーンは、土方のその後の生き方を決定づけた瞬間なのかと思うと、切なくなる。
以 上
コメント